SUS製焼結金属フィルター(多孔質金属)の複雑形状化

多孔質金属

焼結金属(多孔質金属)とは

焼結金属(多孔質金属)とは、粉末冶金法(金属粉末を成形して焼結し金属製品を作る製法)で製作された製品のことを『焼結金属』と呼ぶ。焼結金属を多孔質化し、全ての気孔が連結された製品が焼結金属フィルターである。焼結金属フィルターは『焼結金属』、『焼結フィルター』、『焼結金属フィルター』『焼結金属エレメント』、『焼結エレメント』『ポーラスメタル』、『多孔質金属フィルター』などと呼ばれることがあるが全て同じ多孔質金属のことである。

円筒形状(パイプ形状)のブロンズ製焼結金属フィルターエレメント
円筒形状(パイプ形状)のブロンズ製焼結金属フィルターエレメント

多孔質金属の素材の種類

多孔質金属はどのような素材を使用するかにより、性能・形状・圧力損失が変わのでご使用環境や用途により最適な素材を選定することが必要であると考えます

粉末

焼結金属とは
焼結金属とは

焼結金属は、金属粉末を焼結処理により結合させ、焼結体内部に複雑な流路を形成し、空間(気孔)を作りながらも強度を確保した多孔質金属である

金網

焼結金網
焼結金網

焼結金網は、金網を1枚から複数枚積層し、焼結処理(金網の線と線を溶着させる)を施した製品である。金網を積層し、焼結処理を施すことにより積層した層と層を一体化することが可能で①強度の確保、②正確な気孔径、③圧力損失の低減をバランスよく適えることが出来る多孔質金属である

ファイバー

ファイバー(金属繊維)焼結
ファイバー(金属繊維)焼結

ファイバー(金属繊維)焼結は、ファイバー(金属繊維)を圧縮成形し焼結処理を施した多孔質金属で、密度をコントロールすることにより強度・圧力損失のバランスを選択できる。厚みは0.3~1.0tと非常に薄く、密度は低い。濾過精度は標準的なモノで3~75μ。特殊仕様で0.5μまで対応可能

エッチング

エッチング焼結プレート
エッチング焼結プレート

エッチング焼結プレートは、エッチングプレートを複数枚積層し焼結処理によりエッチングプレート同士を接合(溶着)させることにより、エッチングプレート単体での強度不足、厚み不足を補える、かつ、通常困難とされる板厚よりも小さい孔をあけることができる多孔質金属ある

多孔質金属の用途

多孔質金属の用途は多岐にわたりますが、用途・ご使用環境に合わせた素材を使用する必要がございます。

フィルター

SUS焼結金属フィルター
SUS焼結金属フィルター

フィルターとしての焼結金属は内部濾過(深層濾過)、焼結金網は表面濾過ですのでご使用用途、ご使用環境に合わせた多孔質金属を製作致します

サイレンサー

ブロンズ製焼結金属フィルター仕様のサイレンサー(消音器)
ブロンズ製焼結金属フィルターエレメントをハウジングに挿入し、接合方法にカシメを採用したサイレンサー(消音器)

サイレンサーは、焼結金属で作製された消音器は音が直進できず複雑な流路を辿るために、消音効果が期待できます

ストレーナー

ストレーナー
ストレーナー

ストレーナーとしての焼結金属は内部濾過(深層濾過)、焼結金網は表面濾過ですのでご使用用途、ご使用環境に合わせた多孔質金属を製作致します

整流

焼結金属製吸着プレート(浮遊プレート)
焼結金属製吸着プレート(浮遊プレート)

整流目的であれば、焼結金属or焼結金網をガス配管出口に設置することにより、気体の通過を分散することが可能(整流化)になり、効果的なガス流入が可能になります。多孔質金属製ですのである程度の形状の自由度が高く、耐熱性があり、高強度な整流板となります

ベイパーチャンバー(ヒートシンク)

銅粉末製の水路設置型焼結金属・多孔質金属
銅粉末焼結金属(多孔質金属)と銅板の間に水の通り道(水路)を設置することによりヒートシンクなどの熱交換器部材などの性能向上が期待できる。また、粉末の微細気孔により毛細管現象による吸水機能も期待できる

ヒートシンクであれば、焼結金属(多孔質金属)の気孔を液体が通過することにより金属からの熱伝導が効果的に伝わります

吸水金属

液体吸水・保持(毛細管現象)

吸水金属は焼結金属(多孔質金属)の特徴でもある微細気孔(毛細管現象)を利用した 多孔質金属

バブリング

バブリングノズルによる気泡発生の様子
バブリングノズルによる気泡発生の様子。肉眼で観察したバブリング状況と瞬間的に撮影したバブリング画像を比較することにより、気泡径・気泡発生量などが見て取れる

焼結金属焼結金網を採用したバブリングノズルは気泡を拡散することが可能です。気泡を微細化するには一工夫必要となりますが現在最重要事項と考え、開発に取り組んでおります

防爆フィルター

防爆フィルター/フレームアレスター
防爆フィルター/フレームアレスター

焼結金属焼結金網を採用した防爆フィルター、フレームアレスターは微細気孔を通過することによる消炎効果、焼結金属フィルターによる連続気孔による内部圧力の通過、金属素材同士の結合による優れた強度により採用実績多数ございます

金型のガス排出

芳香金属〜金属から香水の香り〜
金型からのガス排出

射出成形時に発生するガスを排出する目的で射出成形型に設置し金型のガス抜き(エアー抜き)に使用されます。一般的なガス抜きは気孔構造がストレートで圧力損失が低すぎたり、気孔が大き過ぎ『ヘタ』が大きく次工程の手間が多かったりと問題点もあるかと思います。焼結金属フィルターエレメントであれば気孔構造は複雑な流路構造を形成しますので適度な圧力損失で気孔径は数μmから100μmまで充填材に合わせて選定可能です。次工程の削減にかなり有効かと思います。

芳香金属

芳香金属〜金属から香水の香り〜
芳香金属〜金属から香水の香り〜

焼結金属における二次加工で『含浸』という技術があります。通常はオイルを『含浸』させることによりオイルレス軸受等に用いる技術ですが、その技術を応用することにより香りのする金属を製作することも可能です。また、虫除け剤を『含浸』すれば…

電極

多孔質金属による電気分解
水道水中で陰極にニッケル焼結金属(多孔質金属)、陽極に銅の焼結金網(多孔質金属)を用いた電気分解実験

電極としては焼結金属の特性である内部の空孔、当社の特長でもある連通孔により電極内部でも電気分解が起こっていると考えます。

焼結のメカニズム

  1. 金属粉(粒)体の活性化
  2. 金属粉(粒)体表面の溶融
  3. ネックと呼ばれる金属粉(粒)体と金属粉(粒)体の間に出来るくびれの様なものの形成
  4. ネックの成長

と、焼結が進行するメカニズムには大きく4段階ありネックの成長が少なすぎると強度が足りず粉末がポロポロする『脱粒』という現象が生じます。逆に成長しすぎると気孔が全て潰れてしまい多孔質金属では無くなってしまいます。

多孔質金属の加工例

公称濾過精度とは

公称濾過精度とは、焼結金属(多孔質金属)における濾過の精度を表した単位であり、気孔径とは異なる。現在、焼結フィルターには統一された明確な規格がなく規程はメーカーにより規程されるため公称値となる。そのため、焼結金属メーカーにより規格が異なる。

ブロンズ焼結金属の濾過精度比較
ブロンズ焼結金属の濾過精度比較
SUS焼結金属の濾過精度比較
SUS焼結金属の濾過精度比較

目開きとは

目開きとは、焼結金網等の規則性のある多孔質体に使用される単位。線から線までの距離のこと。

気孔径とは

気孔径とは、焼結金属フィルターにおける目開きの内接円の内径のこと。ただし、計算で目標空隙率から粒径を推定できるのは無加圧状態での話であり、加圧焼結法により空隙率を制御した場合は空隙率は制御できるが気孔径が変動する。あくまで大事なのは、開発目標に対して必要であるパラメータを製作側に要望して頂けるかによる。

アルミニウム製多孔質金属凸形状
アルミニウム製多孔質金属を表面積が増大するようにフィン付(凸形状)の複雑形状を製作。さらに、粒径と空隙率を同形状にて比較

多孔質金属の材質

焼結金属(多孔質金属)の処理材質15種類超!! 一覧にない材質も検討致します。

焼結材質15種類超の実績
焼結材質15種類超の実績

寸法の実績

厚み0.2mm(200μm)の焼結金属(多孔質金属)です。MAX寸法は不明ですが、現状85mm×85mmまでの実績はございます

ニッケル粉末製の極薄0.2mm(200μm)焼結金属・多孔質金属
材質にニッケル粉末を使用した極薄0.2mm(200μm)の焼結金属・多孔質金属。気孔構造は複雑構造で気孔が連結した連通気孔なので毛細管現象の機能も期待できる
銅粉末製の極薄0.2mm(200μm)焼結金属・多孔質金属
材質に銅粉末を使用した極薄0.2mm(200μm)の焼結金属・多孔質金属。気孔構造は複雑構造で気孔が連結した連通気孔なので毛細管現象の機能も期待できる

焼結の方法により製作可能範囲は大きく増減しますが、500×250×t5の様な寸法や焼結手法によりもっと大きな焼結体(多孔質金属)も製作可能です。

銅製焼結金属(多孔質金属)
銅の焼結金属(多孔質金属)ですべての気孔が連続した連通孔。最大寸法の250×500